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歯周病と全身の関わり


「お口の病気はお口の中だけのもの」と考えていませんか?実は歯周病はお口の中の病気のひとつではありますが、身体の中の様々な状態とも関連しているため、身体へも影響を及ぼす・・・ということがわかってきました。

歯周病

歯周病とは?

歯周病は歯のまわりの組織であるハグキ(歯肉)、歯槽骨(しそうこつ)などの病気で、細菌によって引きおこされる感染症です。お口の中に細菌が定着すると、炎症が起こり、ハグキが赤くなったり、腫れたりします。この炎症が継続して起こると、歯の周りの組織(歯周組織)が破壊され、最後には歯が抜け落ちてしまいます。

歯周病と全身のかかわり

これまで歯周病は、お口の中だけの病気と考えられてきました。しかしながら、近年、歯周病が全身にもたらす影響、また全身が歯周病に与える影響についての研究が進められています。ここでは、歯周病と関連があると言われている6つの症状について、その研究報告内容の一部をご紹介します。

糖尿病

糖尿病は、血糖を下げるホルモン(インスリン)が足りなくなったり、うまく作用しなくなることで、高血糖が続く疾患です。血糖値が高い状態が続くと、様々な合併症が起きやすいとされており、歯周病は糖尿病の合併症として捉えられています。糖尿病の人は、糖尿病でない人に比べて歯周病になるリスクが高いという報告や、歯周病の治療によってハグキの炎症が改善すると、インスリンが働きやすい状態になって、血糖値が改善する可能性があるという報告があります。

心疾患

心疾患は、食生活や運動、ストレスなどの積み重ねが引き起こす生活習慣病の一つです。歯周病のある人は、ない人と比べて心疾患を発症するリスクが高いことが報告されています。また、歯周病が重篤であればあるほど、その発症リスクが高くなるとも言われています。これは、歯周病によってハグキで産生された炎症性物質が血流を介して心臓血管にも影響を及ぼすためと考えられています。

早期低体重児出産

妊娠中の女性で歯周病の人は、そうでない人に比べて低体重児出産や早産する確率が高いことが報告されています。妊娠中の女性は、つわりによって口腔清掃が不良になりやすいため、歯周病に罹りやすくなります。歯周病による炎症性物質がへその緒を通じて胎児に影響するため、早期低体重児出産の確率が高まると考えられています。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

肺や気管は、咳など身体が生理的に反応することによって守られています。しかし、生理的機能が衰えると、自らの唾液や食べ物が誤って肺に入り、肺炎を起こしてしまいます。これを誤嚥性肺炎といい、唾液中に含まれる細菌が主な原因です。歯周病菌は肺炎の原因となるものが多いので、高齢、認知症、脳血管障害、手術後など、食物の飲み込みを上手く行えない人は、特に注意が必要です。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより、骨が弱くなる病気です。全身的に骨が弱くなると、歯を支える歯周組織にも影響があると考えられています。一方で、歯周病は、歯を支えるハグキを破壊する病気です。歯槽骨が弱くなると歯周組織の破壊が進みやすくなるため、骨粗鬆症は歯周病を進行させる一因と考えられています。

肝疾患

脂肪肝と歯周病について

肝臓を壊す病気と聞いたらC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルス、アルコールを思い浮かべるのではないでしょうか?しかし、ここ最近、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルス、アルコール以外にも肝臓を壊し、肝硬変や肝臓がんを引き起こす怖い病気が注目を集めています。

その病気はお酒を飲まない人の脂肪肝が原因で起こります。良く健康診断で、「脂肪肝」「肝臓が悪い」と指摘されていませんか?それがこの病気を早期発見するキーワードです。現在、日本人の4人に1人は脂肪肝であると言われており、日本人の大多数が脂肪肝をきたしています。

昔はお酒を飲まない人の脂肪肝は放置しても良いとされていました。しかしながら、お酒を飲まない人の脂肪肝の中でも10%は肝臓が炎症を起こし、肝臓が硬くなる肝硬変、肝臓がんを引き起こすことがわかってきました。

その病気は、「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)」と呼ばれています。脂肪肝からNASH(ナッシュ)を引き起こす原因には、肥満や糖尿病、腸内細菌など様々な原因があります。そのためNASH(ナッシュ)の治療の基本は食事制限や運動による減量や薬物療法となります。

しかしながら、これらの治療でも改善がない例は他の原因も考えなければなりませんでした。その結果、NASH(ナッシュ)を引き起こす意外な原因のひとつが「歯周病」であることがわかりました。歯周病は、5〜6種類の歯周病菌が歯周ポケットという歯と歯茎のすき間に入り歯茎を炎症させる。進行すると歯茎に腫れや出血が生じ、歯を支えている骨が溶けていく感染症で実は、NASHと歯周病菌は深く関与しています。

われわれは、歯周病菌の中でも、ギンギバリス菌という悪玉の歯周病菌に着目し、世界に先駆けてNASH(ナッシュ)と歯周病の関連について研究を開始し歯周病のあるNASH(ナッシュ)患者が歯周病を治療すると、NASH(ナッシュ)が改善すること報告しました。

そのため、NASH(ナッシュ)にとって歯周病治療はとても重要であることがわかりました。この市民公開講座をきっかけに、今の日本で大多数を占めている脂肪肝の中に、悪性脂肪肝「(NASH:ナッシュ)」が存在すること、その予防に歯周病治療が重要であることを知っていただければと思います。今現在、自分がNASHではないか?と思っている方がいるかもしれません。

結束 貴臣 先生
横浜市大学医学部
肝胆臓消化器病学 助教

歯周病

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