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競走馬は歯で買う!

“馬齢(ばれい)を重ねる”という言葉がある。“無為に年を取る”という意味である。この言葉の語源について詳しくは知らない。しかし馬齢の“齢”は“よわい”という字。馬と齢は,どのように関わっているのだろうか?一般に草食動物は,他の動物と比べ歯の減りが激しい。1年の間に約2ミリも歯が擦り減る。だからウマの齢は,歯の状態から推定できるのだ。

さて競走馬にまつわる歯の話題は数多い。ウマ好きの方ならご存知だろうが,4歳馬と言えば競走馬にとって生涯一度のチャンス。なにしろ皐月賞・ダービー・菊花賞などの大レ−スが控えている。たった2・3分の間に,もてるパワーを爆発させる。最高の状態で晴れ舞台に立てるよう,ちょっとした体調の変化も見逃せない。

ところでこの頃,歯の萌え代わりの時期である。調教師は,食欲が落ちると,まず歯を診る。萌え代わりで痛ければエサを食べない。“歯がわりに当たって体調を崩した”と言われるほど,食べられずに勝利を逸したケースは多い。また歯の擦り減り方が不均一だと,鋭利な部分で粘膜を傷つける。これもまた食欲に影響するる。そこで獣医に依頼し歯にヤスリをかけ,噛み合わせを調整する。ウマも定期的に歯のチェックをしているのだ。

ここで調教師から聞いたウマの見分け方を披露しよう。まず前歯を見る。ウマは前歯で短い草を引き抜いて食べるため,先どうしが当たっているのが良いという。この様な噛み合わせをしているウマが,食欲旺盛だと言う。次にアゴの張ったウマが良い。アゴが発達していることは,歯がよくて何でも噛んで健康とされている。軟らかい食物の影響で細くなった現代人とは大違いだ。

そもそもウマは,1日16時間食べ続けるなかで進化してきた動物だ。草はエネルギー効率が悪い。だから普通の食事では,体を維持するのに精一杯なのだ。これではとても走れない。そこで競走馬に,高カロリーで消化しやすい配合飼料を与える。なるほど!それなら走れる!と思われるだろうが,それでも問題が残る。ウマにとっては,栄養面より食べることにあてる時間が大事なのだ。小さな固形資料を与えても問題が残る。。食べ終えても,他のウマが食べ続けていると,ストレスを感じるらしい。イライラして,調教どころではなくなるのだ。さあ困った。

そこで,飼い葉桶の中に大きな石ころを入れたりサカナの網にエサを入れて与える。食べにくくさせることで,ゆっくり食事を楽しむことができる。ウマもゆっくり噛むことで満足するのだ。忙しい現代社会,ウマに見習うべきことがたくさんありそうだ。

参考資料 おもしろ歯学 岡崎好秀

 

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